隈さんが来た。
暮れの押し迫る中、建築家の隈さんが、蔵の解体後の進捗状況と現場を確認に来られました。
(図面をもって説明する藤原君。後ろで心配そうに見守る会長)
現場にこそ、ヒントがある。というのは隈さんの信条。数々の制約条件を乗り越えていく中に、すばらしい建築はできあがる。果たして当社の制約条件は・・・・。山ほどあるが・・・。
(濱田醤油のシンボル「醤油のクスノキ」をバックに議論する隈さん)
「たしかに蔵は大切だが、全国にもりっぱな蔵はたくさん残っている。蔵だけで、他の蔵に勝てるの?」あくまで冷静な隈さん。施主としては保有の蔵のことを、こんな蔵は他にも五万とある。と言われると、心中穏やかではないが、冷静に判断すればその通りである。
「蔵群を引き立たせるための大仕掛けが必要。それもコストをかけないで・・・。やっぱここは取り壊して、竹の空間を広く確保するのがいいんじゃあないかな? それに、蔵の中のレストランでは、ありきたりで、面白くない。このプランでは勝てないよ。」と隈さん。
(改修予定の原料倉庫の2階で、携帯にて法的確認をとる藤原君。構想を練る隈さん。)
「しかし、蔵を壊して、レストラン可能な空間創出には、費用的には収まりません。それに既存蔵(原料倉庫)を多目的スペースとしての一体感や、厨房との一体感も含めると、どうしても既存の研究室棟の建物を残さないと法的に不可能です・・・」藤原氏。
沈黙が流れる・・・。
「・・・じゃあレストランを見直したらどうだろう?・・。これでは勝てない。場所もここでなくてもいいじゃないか?」隈さんのウルトラCが飛び出した。
見切りの速さと決断の早さが持ち味の隈さん。
一方。戸惑う私・・・。
「え??・・・今までのプランは何だったんだ・・・?徒労に終わったということか・・竹は辞めるということですか?」恐る恐る隈さんにぶつける。
「いや、そうじゃない。進捗できなかったのは、足踏みして再度検討せよ。という神のお導き。よかったんじゃあないか!!レストランをはずして考えてみればきっとこのプランはうまくいくよ。」朝令暮改ではあるが・・自信にあふれる隈さんの言葉に計画変更と見直しは、プラスであると確信する。 世界中のビッグプロジェクトを同時進行していくためには、このくらいの潔さ(いさぎよさ)が不可欠なのだろう。
「NHKのプロフェッショナルでレストランと放映されてしまってますが・・いいんですか?」と私。
「そんなことはどうでもいいじゃん。もうみんな忘れてしまってるよ。それより事業採算が最重要なんだから・・」隈さんが言い切る。
「よし。基本プランは変更せず、用途変更だ。レストランを計画からはずして、再構築してくれ!!」
2時間に及ぶ現地視察を終え、一同解散。
「信じて欲しい。浜田さん。僕が自信を持てないことはしないほうがいい・・・。これならきっとうまくいくよ。竹の多目的スペースを併設して、蔵が蘇る。生産ラインの最終兵器も来年はいよいよ導入されるし、生産ブランドの価値は高まるよ。大丈夫。レストランは別のとこで計画しよう。まずは、この蔵を「勝てる」蔵にしよう。」
負ける建築の著者から「勝てる蔵」と言われるとどうもしっくり来ないが、本質は同じなのだと理解するのにあまり時間はかからなかった。
建築家に翻弄された半日のような気がしないでもないが、ここまで事業中心に検討してくれている隈さんをみて、これでいいんだ。と自分自身に言い聞かせた。
(全面に竹を誂えた基本計画)
